伊藤桂司
アーティスト/ペインター。1958年東京生まれ。UFG Inc. 代表。広告、書籍、音楽関係のアートディレクション、グラフィックワーク、映像等を中心に幅広く活動する。 国内外で展覧会を開催。愛知万博 EXPO 2005では世界公式ポスターのアートワークを手がける。
http://www.site-ufg.com/
伊藤桂司×後藤繁雄
「幕張の風景を見てると、古代が浮かぶ。
でもそれが僕の未来イメージに近いんです」
絵には不思議なパワーがあると思いませんか? 特別にアート好きな人でなくても、記憶をたどれば、自分にとっての思い出の一枚があったり。それは、その人の気持ちをうつす「鏡」であるのかもしれません。もちろん、絵には人の気持ちをやわらげたり、気分を変えてくれたりする効果もあります。では、このアクアテラスの入口やロビーには、どんな絵が?
私たちはその絵を、なんと名古屋万博のイメージ・ポスターなどでも知られるアーティスト、伊藤桂司さんに描きおろしてもらうことにしました。伊藤桂司さんは、ふだんから一貫して「フューチャー(未来)感覚」をテーマにしています。「ここからちょっと先の世界」それを予感しながら作品をつくり続けてきました。
さて、その伊藤さんに幕張に感じたインスピレーションを聞いてみました。後藤繁雄さんが聞き手です。
後藤―ずいぶん、幕張のあちこちを歩きまわって写真を撮ったりしてたでしょう?
伊藤―いやあ、幕張をこんなに歩いたのは初めてだったんだけど、はまっちゃって。
後藤―どういうところにはまったんですか?
伊藤―海と川が近いでしょう。それに意外とミドリが多くって。ふつう、みんなは「未来」っていうと、テクノロジーが発達してて、インダストリアルな感覚をもつんだけど、僕は、幕張に来て一番最初に浮かんだのは、「古代」だったんです(笑)。それもピラミッドとか、すごく古いのにアブストラクトな感覚が強いイメージなんですよ。だから、幕張の風景の遠景に描いちゃった(笑)。
後藤―それはまたすごい(笑)。桂司さんはここのところ個展を次々に行っているけれど、一貫したテーマを「スーパー・ナチュラル」っていうキーワードにしてるでしょ。今回の幕張のアートワークも関係してますか?
伊藤―極端かもしれないけど、やっぱり人々の心の奥底には、ユートピア探しの気持ちがあるんだと思う。それは、ふだんは隠れてるんだよね。
後藤―「ここではないどこか」ですね。
伊藤―そうそう。
後藤―僕は今回、エントランスのアートワークを誰にお願いしようかと考えたとき、まず浮かんだキーワードが「やさしいフューチャー」というコトバだったんです。そして浮かんだイメージが、空でありミドリだった。最先端なんだけど、なつかしい感じとか。
伊藤―だからね、突拍子もない未来を夢想するより、幕張をよく見たほうが未来がイメージできるんだよね。
後藤―なるほどね。「ここ」なんだけど、ちょっとずれた「ここ」を描くってことだ。
伊藤―僕らは、ずいぶん進んだ文明の中にいるけど、カラダやイメージの中では、原初のものが生きている。それが描けたらね。
後藤―毎日見てもらうわけだしね。イメージって大切だ。自分たちがいる場所のことでもあるわけだし。
